Topic

大手食品グループから業務用水産練り製品事業をカーブアウト

成長が見込まれる介護施設・病院市場における高いプレゼンスを持つ企業への投資

プライベート・エクイティ部

中山 淳 本間 茂寿 峯 太樹

Table of Contents

Introduction

投資背景

大手食品グループが業務用食材事業を売却することになり、対象事業をカーブアウトで譲り受け、TSA(Transition Service Agreement)期間内にスタンドアロン化させるというプロジェクトでした。

この業務用食材事業は、業務用水産練り製品の取り扱いが国内トップクラスであり、かつ今後成長が見込まれている介護施設・病院マーケットにおいて高いプレゼンスを持っていました。このように一定のマーケットでのトッププレイヤーである一方、仕入先は小規模に分散してリスク分散が図れているという代替が難しいポジショニングであり、安定的な成長が見込める案件でした。

私たちは、この事業を高く評価していることをお伝えし、大和証券グループという信頼感・安心感を感じていただけたことで、譲り受けが決まりました。新しい社名は「株式会社マリン・プロフーズ」(以降、マリン・プロフーズ社)です。ここから「高成長ポテンシャルのあるニッチ企業」の成長戦略を構築することが私たちのミッションになりました。

商品が使用された料理の一例。華やかな料理をより手軽に実現できる。

「食」の安全性を担保し、健康志向や食料危機に貢献する企業

マリン・プロフーズ社は、調理現場の人手不足から生じるニーズに対応できる商材を多く揃えています。商品は約9割が冷凍で、かまぼこ、ちくわ、さつま揚げなどの練り製品を、ユーザーのニーズに合う形にカットしてから冷凍し、出荷しています。農産・大豆加工品については、主な商品として「鬼おろし」という粗目の大根おろしや、カット済みの油揚げ、サイコロ形にカットした豆腐などがあります。チルド品も扱っており、7種類のおでん具材が入ったおでんパックは外食等に人気があります。さらに、将来的に需要拡大が見込まれる大豆ミートを始めとした機能性食材のテスト販売も始めています。

エンドユーザーは病院や高齢者施設の給食事業者のほか、事業所給食、学校給食、外食・中食等になるため、安全性がとても重要になります。マリン・プロフーズ社では、大手食品グループ基準の高い品質保証を提供することが可能で、「食の安全」を担保する体制を整備しています。

また、練り製品及び大豆加工食品は高タンパクで低脂質な商材であるため、健康志向や食料危機(世界的な人口増による畜肉不足)に貢献する企業であると考えています。

実際に調理するユーザーからのフィードバックを元に、使いやすい形に加工して販売している。着色にも天然着色料を使うこだわり。

難易度の高いスタンドアロン化に成功し、過去最高売上を達成

スタンドアロン化は、大企業グループからの離脱・独立を意味します。このことが顧客や従業員の離反、売上の減少、従業員のモチベーションの減退などにつながることが懸念されました。

また、会社の管理機能は譲受対象ではなかったため、システムやオフィスをゼロから整備する必要がありましたが、TSA(Transition Service Agreement)で決められた移行期間が1年と短く、対応可能なシステムベンダーや必要機能を備えたオフィス物件探しが難航しました。

残念ながら一部社員の退職はありましたが、中堅以降の社員の離脱は無く、むしろ独立を前向きに捉えていただきました。優秀な社員が、事務所移転やシステム構築といった初めて経験するタスクを短期間で成し遂げたことに加え、さまざまな分野のプロフェッショナル、タイトなスケジュールでシステム制作や内装工事を進めてくださった業者の方々のご協力により、予定通り1年で独立が完了しました。

投資後20か月経過した現在(2023年9月時点)のマリン・プロフーズ社はバリューアップ中で、社員数も離脱前より11名増加した56名になり、2023年3月期は過去最高売上を達成しております。

新しくなったロゴが掲げられている本社オフィス。

社員の頑張りを還元する仕組みづくりへ

マリン・プロフーズ社は独立したことで、かつての部署の業績が会社の業績となり、社員の方々のモチベーションがわかりやすくなりました。社員のモチベーションをさらに活かすことは重要な課題です。

私たちは引き続き成長戦略の続きとして、マリン・プロフーズ社単独では実行が難しいロールアップを中心にサポートしていく予定です。

From the team

担当チームよりひとこと

  • 私たちが行っている投資業務は、売買で儲けるだけでなく、人を動かす、会社を動かす、そして社会を動かすために行っている業務であると思っている。

    プライベート・エクイティ部

    中山 淳

  • PE投資は、多くのプロフェッショナルと関わる刺激的な仕事。本案件は、非常にタフな案件であったが、食品業界のカーブアウトのモデルケースになってくれたら、担当者冥利に尽きる。

    プライベート・エクイティ部

    本間 茂寿

  • 既存業務と並行して基幹システムを入れ替えるプロセスは、マリン・プロフーズ社員の皆様にとっても初めてのことでご不安も多かったと拝察するが、拡張性の高いクラウドシステムの導入により、新たな旅立ちを支援できたことを嬉しく思う。

    プライベート・エクイティ部

    峯 太樹