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インタビュー
プロジェクトを担う、もう一つの推進力
リスクマネジメント・チームとその役割
大和PIパートナーズでは、さまざまなアセットへの投資を行っている。
投資の過程に存在するリスクへの対処力というのも投資会社の実力の重要な柱である。長年の投資業務で培ってきたリスクマネジメントの経験やスキルが、現在どのような形で会社の経営に活かされているのか。
2年前にチームに加わった山口さんが進めるシステム化プロジェクトについても聞きながら、大和PIパートナーズのリスクマネジメント業務の現在地を探る。
今回は財務・リスクマネジメント部長の佐々木さんにもご同席いただき、経営企画部の平尾が聞いていく。
メンバー:

2008年より大和証券SMBCプリンシパル・インベストメンツ経営企画部にて財務を担当。2010年大和PIパートナーズ設立時より兼務。2024年1月より財務・リスクマネジメント部長。
財務・リスクマネジメント部
佐々木 広明

2007年大和証券SMBC(現大和証券)入社。リスクマネジメント、コラテラルマネジメント(担保管理)の職務を経て、2023年より大和PIパートナーズ財務・リスクマネジメント部に所属。
財務・リスクマネジメント部
山口 理乃(あやの)
フロントとは信頼関係に基づいた協働を目指す
今日はよろしくお願いします。
これまでフロントのメンバーやプロジェクトを中心に取り上げてきましたが、新たにミドルの役割を担うリスクマネジメントの紹介もしたいと考えています。
早速ですが、大和PIパートナーズのリスクマネジメント・チームについて教えていただけますか?

佐々木
大和PIパートナーズのリスクマネジメント・チームは財務・リスクマネジメント部に所属する7名のメンバーで構成されています。メンバーのバックグラウンドはさまざまですが、それぞれの経験値を持ち寄った専門性の高い部署になっています。
深掘りしていく前に、まずは前提となる知識を整理しておこうと思います。そもそも投資会社におけるリスクマネジメントとはどのようなものでしょうか?
山口
投資会社が利益を上げる過程にはさまざまなリスク…つまり想定したリターンを回収できない要因となり得る事象が伴います。
フロント部署は収益の創出に焦点を当てています。ポテンシャルの高い案件を発掘し、投資実行に向かっていくプロ集団ですが、リスクを取る方向の動きです。
フロントの皆さんが自分たちの仕事に集中しながらも、会社の経営の健全性を確保していくためには、リスクを取り続けても大丈夫かどうか、また違う「目」を持って確認し、バランスを取る役割の部隊が必要になります。
その役割を担うのが私たちのチームです。最終的な投資判断を行う経営陣に対し、リスクマネジメントの観点から意見を出しています。
一方は案件推進、もう一方はリスク懸念を表明するとなると、両者の間に緊張感が生まれてしまいそうですが、その辺りはどうなんでしょうか?
山口
そうですよね。でも実はフロントとリスクマネジメントは対立するような関係にはないんですよ。
フロント部署が推進しようとする案件が、大和PIパートナーズ、ひいては社会にとって意義のある案件かどうか、フロント部署と共に考える…私はリスクマネジメントの役割をそう理解しています。
ただ、私たちがけん制のような提案をしてブレーキのような役割をすることがあるので、そこが対立を生みそうな印象になるんですよね。
そういった関係性を実現・維持するにはどういったことが大事だと思いますか?
山口
私は信頼だと思っています。
大和PIパートナーズは「調和や信頼を大切にする」ということを理念として掲げていますが、リスクマネジメントとフロント部署の関係性も例外ではないと思います。
フロント部署はソーシングから立案まで時間をかけてかなりの準備をしています。私たちもそれに応えられるよう案件をよく理解し、投資判断にかかる意見を出す必要があります。最終的には「この人たちがいれば大丈夫」だと、フロント部署や経営陣から信頼を得られる存在になっていきたいと考えています。
佐々木
そうですね。「この部に相談すれば大丈夫」と信頼を得られる部に成長させるのが私の役割だと考えています。
投資案件のポイントを見極めて意見をまとめる
なるほど。「信頼」や「調和」と言ったキーワードは、このDiscoveryの他の記事にも良く出てきますし、大和PIパートナーズが大切にしている価値観でもありますね。
ところで、どのような形で「意見」を出されているのでしょうか?

山口
先ほども少し触れた部分ではありますが、投資の入り口では、フロント部署がソーシングし、立案まで準備をしてきた候補案件に対して投資判断にかかる意見(案件から想定されるリスク)を出しています。
内容はどういったものになりますか?
山口
投資先のビジネスモデル、業績計画、収益性など、さまざまな情報をもとに、投資後どのようなリスクが考えられるかを整理しています。
投資を行う上で重要な判断材料になるので、その中でもキーとなるリスクが何か、投資案件のポイントを見極めて意見をまとめるように心がけています。
ただ、リスクマネジメントの仕事はそれで終わりではなく、投資実行後も財務状況や投資先の様々な状況を把握し、回収懸念がないかモニタリングしています。債権・不動産・エクイティなど投資アセットの対象にもよりますが、投資決定から売却まで、通常数年という長い期間をかけることになるので、案件の経緯を把握することも重要です。フロントが開く週次ミーティングなどを通して、投資先の状況をモニタリングしています。
佐々木
自分が担当する分野を突き詰めるフロント部署とは異なり、さまざまな種類の投資アセットの内容を把握することが必要となるところがリスクマネジメント業務の特徴です。
積み上げてきたのは変化に対応する力
さまざまな投資アセットという意味で言うと、大和PIパートナーズは金銭債権投資をはじめとした幅広い領域で投資を行ってきました。そこで積み上がったノウハウもあるのではないでしょうか?
佐々木
たしかに、日本の金融機関が不良債権問題の解決に向けてオフバランス化を推進する中、一方で当社は金銭債権投資を行ってきました。
また、プライベートエクイティ、不動産、大和エナジー・インフラ設立につながる環境関連投資などへと投資対象を広げ、企業再生やファンド組成も行ってきましたので、常に「変化」に対応してきたと言えるでしょう。
そういった流れの中で、リスクマネジメントのスキル、やり方が培われてきたとは思いますね。
具体的にはどのような力が醸成されたと思いますか?
佐々木
例えば案件に対して、要所を押さえた意見を出す力を各メンバーが備えていると思います。投資という意味での専門家は明らかにフロントですからね。
もう一つは数字をしっかり見る力ですね。数字から具体的な意見を出していくのが私たちの力、役割だと思います。
数字といえば、佐々木さんは30年以上財務をやっていらっしゃって、大和PIパートナーズは前身を含めて15年近く見てきていますよね。
佐々木
環境の変化に柔軟に対応し、債権投資を中心としながらも、さまざまな投資を組み合わせながらバランスを取って着実に成長してきた会社だなと思いますね。
そういう意味では昨年から財務・リスクマネジメント部という形で財務とリスクマネジメントが一つになったわけなので、その過程を見てきた経験と感覚はさらに求められていると感じています。
次世代に向かう新たなプロジェクト
やはりその30年を全て見てきた佐々木さんが後ろにいらっしゃるのは安心感が違う気がします。
ところで、山口さんは新たなプロジェクト立ち上げられたそうですね?

山口
はい、データ整備や業務効率を目的としたシステム化プロジェクトを立ち上げ、現在進行中です。
どのようなきっかけがあったのでしょうか?
山口
「リスクマネジメント」という言葉そのものが抽象的なので、自分の言葉で相手に伝わる説明ができるように心がけています。その中でチームの担当者全員が同じように仕事ができるよう、また後任の担当者にもつなげていけるように、マニュアル化や明文化を意識したほうがいいんじゃないかと考えるようになったんです。
なんとなく先ほどの佐々木さんのお話にあった経験値の積み上げと関係ありそうな感じもありますね。
佐々木
以前、料理人が「後継を育てるのも職人の仕事」という話をしているのをテレビで見ましたが、やはりバトンを渡していくための仕組みっていうのは大事ですよね。
ただ、私たちのリスクマネジメント業務は、法律や基準に基づいたものは少なく、ルールを作り、どのような仕事をして行くかを考えるところからスタートするので、これをマニュアル化・明文化することは難易度が高いわけです。それを山口さんは自ら進んで立ち上げてくれました。
山口
リスクマネジメントは、フロント部署とは異なり直接収益を上げることはできないので、業務改善やルール整備など、付加価値をつけることでの貢献が必要だと考えています。
大和PIパートナーズのリスクマネジメントの歴史と積み上げについては佐々木さんからご説明のあった通りで、私も学ぶことばかりですが、その中でも課題を認識し、改善の必要性を訴え、経営陣の理解を得られたことでプロジェクト化につなげることができました。
「進化版」リスクマネジメントを目指せ、ですね。
山口
データ整備と効率化による業務クオリティの向上のためのツール構築として取り組んでいます。
必要なことを可視化することで、チーム内やフロント部署とのコミュニケーションや共通理解を改善し、全体のパフォーマンスを上げることが目的です。皆さんの「プロの勘」みたいなものがより活きてくる環境構築ができたらいいですね。
佐々木
完成まで数年のハードなプロジェクトですが、意識高く取り組んでいると思うので、しっかりサポートして行きたいと思います。
不確実性の中にも安定感を
最後に今後への抱負などを聞かせていただければと思います。

山口
日本のみならず世界の情勢が刻々と変わり続ける中、金融や投資先の状況も変化していくことが予想されます。変化する環境に柔軟に対応し、チャレンジを続けることのできる組織、その一員でありたいです。
引き続きチームメンバーに学びながら経験値を積み上げ、システム化プロジェクトを成し遂げたいと思います。
佐々木
より安定したリスクマネジメント機能を提供できるようにしていきたいですね。
山口さんには、この効率化・業務改善プロジェクトを通じてこの仕事への理解を深め、今後中心的な役割を担っていってほしいと思います。変化を恐れず、逆に楽しんでチャレンジしてほしいですね。
本日はありがとうございました。
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