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ケータリング・給食事業の老舗を事業承継

「人の想い」が成長を生み出すサービス産業だからこそ、従業員たちが幸せに働ける会社に

プライベート・エクイティ部

中山 淳 柴原 一貴

Table of Contents

Introduction

投資背景

東京ケータリング株式会社(以降、「東京ケータリング社」)は1965年に創業し、1971年に国立大学の学生食堂の受託をしてから、主に病院・企業・官公庁・学校などで食事を提供する企業として成長してきました。レストランや宿泊施設、コンビニエンスストアの経営もしています。

東京ケータリング社のB2Bビジネスは、顧客との信頼関係を構築することで長期かつ安定したキャッシュフローを創出できる収益基盤を持っています。投資当初は収益管理の体制が十分でなく、かつ人事制度も整備されていなかったため、経営幹部を育成し、経営組織を強化・構築する必要があり、より永続的な成長が可能な会社に変革させることを目的にプロジェクトが開始しました。

2019年4月に、創業者からの事業承継案件として当社による投資を実行し、2024年8月に新しいオーナーへ引継ぎを完了しました。

「愛ある食空間」と「感動ある憩いの空間」の提供がミッション。

ポジティブな社風が成長のカギ

私たちの経験上、こういったB2Bの業務受託ビジネスを営む企業には受身の社員が多い印象がありますが、東京ケータリング社の社員は前向きで明るい方が多く、受託先の獲得や新規事業、M&Aといった新たな取り組みに対して「やってみよう」という精神で挑まれていました。また、顧客と密接な関係性を構築することで、顧客ニーズを理解し、そのニーズに応じて自社サービスを変容させることのできるカスタマイズ力にも優れています。

リソースの限られる中小企業にとって、M&Aのノウハウは限定的で、実際に実行するためには相応の負荷・負担がかかりますが、東京ケータリング社は足元2年間で、4社から事業の譲り受けを行い、多くの仲間をグループの従業員として迎え入れました。通常業務で忙しい中でも、前向きに協力してくださった従業員が数多くいたことが可能にしたと考えています。

カフェテリアメニューのマンネリ化を防ぐため、専門チームが現地まで赴いて研究し、本格的なご当地メニューを再現。画像は名古屋の味噌カツ。

「見える化」と「合理化」による収益力の向上

既存の実績と強みを引き継ぎながら次の成長フェーズに進むべく、収益力の改善と人事制度の改定を主に行いました。

まず収益力の改善としては、売り上げを追及している一方で、コスト管理の面で改善の余地がまだあることが分かりました。そこで管理会計制度を導入し、拠点別損益の見える化を行うことで、適切な原価やシフトの管理を徹底。さらには部長や、その下のマネージャーも収益責任を負う仕組みを作り、利益に対する意識を高めていきました。途中、コロナ禍や国際情勢によって材料価格が大幅に増加し、値上げ交渉などによる利益の確保に努めたところもありましたが、最終的には課題であった収益を改善することに成功しています。

その上で、さらに売り上げを拡大していける体制構築を目指し、私たちは営業活動の支援とともにロールアップによる販路の拡大や事業の機能強化を推進していきました。新東京食堂、新東京食品産業、ウェルユー・ミール東日本、M社の一部事業の4社を合わせて500人以上従業員が増加しています。

人事制度については、労務管理基盤の構築と公平性・透明性の高い評価制度の整備が課題でした。外部のコンサルティング会社と共に抜本的な改革を行いました。

飲食業界、中食業界で働く人材は定量的成果の把握が難しいですが、等級定義、評価基準、報酬定義の確立に成功し、各社員がキャリアプランを描きやすくなりました。積極的に貢献してくださる社員の方々が適切に評価されることは、会社の成長エネルギーになると考えています。

これらの施策の結果、2024年期のグループ売上高は、コロナ禍以前の2019年期とほぼ同程度に回復しました。利益の水準は当時の数倍となっており、非常に筋肉質な組織となっています。

有資格者で構成した衛生栄養管理室を設置。専門性を生かした衛生管理を行う。

さらに楽しく、安全な食空間を広げていってほしい

東京ケータリング社は、食のインフラを構築し、学校給食を通じて食育を提供する企業でもあります。「食の安全」は常に重要課題であり、私たちの支援中にもHACCPの考えに基づいた衛生管理の導入やISO9001認証取得を行いました。また、従業員をより大切にし、健康管理を行うことで人為的ミスや食中毒リスクを減らす仕組みも構築しています。CSR活動の一環ではTable for TwoのTFTプログラムに積極的に参加するなど、人と社会に寄り添う企業として、さらなる強さを手に入れることができました。

2024年8月にNGFホールディングス株式会社(以降、「NGFHD社」)への売却が完了し、私たちのハンズオンは終了しました。両社の成長戦略には親和性があることに加え、NGFHD社は譲渡後も大切にしてくれるパートナーになると感じられたため、本件譲渡の判断をしました。この2社がタッグを組み、同じグループとなることで、給食業界におけるTier 1のうちの1社に成長できると考えています。

この5年で強化してきた収益力を活かし、さらなる事業拡大を進めながら、楽しくて安全な食空間を広げていってほしいと思います。

From the team

担当チームよりひとこと

  • NGFHD社に売却が決まった際に幹部社員から私に、「我々は大丈夫です。5年前の我々とは違いますので」と自信を持った目で話していただいたことがとても印象に残っております。オーナーの会社という意識から自分たちの会社であるという意識に幹部社員が変わり、それが会社の成長につながったと思います。今後も投資活動を通じ、社員の意識が変わり会社が成長する様を見られればと思います。

    プライベート・エクイティ部

    中山 淳

  • 事業改善に向けた取り組みを、従業員の皆様と前向きかつ着実に進めていけば、良い方向に会社は変わりますし、コロナ禍をはじめとした厳しい事業環境に負けず乗り越えることができると改めて感じた次第です。今後もこのような底力のある企業に投資をしていきたいと思っています。

    プライベート・エクイティ部

    柴原 一貴