Voice
メンバーインタビュー
PE投資を通じて
日本企業のポテンシャルを
引き出す
大和PIキャピタル株式会社
柴原 一貴 Kazuki Shibahara
Kazuki's Background
2015年4月大和証券入社。同年7月に大和PIパートナーズ、プライベート・エクイティ部へ配属。現在は、大和PIキャピタルにてファンド組成を通じたPE投資に携わる。
慶應義塾大学法学部政治学科卒業
中小企業診断士
社内の様々なポジションにいるメンバーにフォーカスを当て、仕事、会社への想い、趣味などについて聞いていくこのシリーズ。第3回は柴原 一貴(かずき)さんにお話を伺う。
IBへの憧れから一転、PE投資の世界へ
本日はよろしくお願いいたします。
よろしくお願いします。
柴原さんは、どのようなお仕事をされていますか?
大和PIパートナーズにはエクイティ投資部(旧:プライベート・エクイティ部)というプライベートエクイティ投資を専門とする部署があります。さらなる成長余地のある企業を発掘し、その未公開株式に投資、ハンズオンによる経営改善を経て、企業価値を高める施策を行っています。
事業承継、カーブアウト案件への投資が多く、特に経営基盤の整備や管理の合理化、さらにはロールアップを中心とした売り上げ拡大といったところに強みがあります。
投資先ごとに担当が決まっており、私は、私が担当する投資先について投資判断からPMI、EXITまで一貫して担当しています。
新卒では大和証券に入社されたそうですね。
はい。もともとインベストメントバンキング(以降、「IB」)に憧れがあったので、在学中に大和証券でIBのインターンをして、証券のホールセール採用で入社しました。
新入社員研修でIB業務を理解していく中で、アドバイザーとしてではなく、M&A実行の結果について責任を負った上で主体的に取り組める業務が良いと考え、配属の際に大和PIパートナーズを志望しました。その希望が通り、配属が決まった2015年の夏からここにいます。
なるほど、インターンもIBだったんですね。入社してすぐに投資業務に関わることになったんでしょうか?
大和PIパートナーズでは投資検討をチームで行いますが、1年目からどこかのチームへアサインされますので、配属直後から投資業務自体には携わることになります。
もっとも、実際の投資は100件検討して1件実行できるかという確率で、投資実行やその後のPMIにどのタイミングで携われるかは、運次第…というところはありますが、私の場合は、入社1年目で正規輸入車ディーラーである株式会社エー・エル・シー(以降、「ALC社」)への投資検討に参加することになり、投資実行につながりましたので、2年目にハンズオン支援がスタートしました。
すごいスピード感ですね。
当然ながら何の知識やノウハウも持ち合わせていないですので、投資先に対して何の貢献もできないと正直感じましたし、上席者の方から手取り足取りでサポートいただきながら、何とか進めていました。中小企業について体系的かつ基礎的な理解をしないとダメだなと思ったというのもあり、中小企業診断士の資格取得を目指したりしながら、仕事を覚える努力を続けました。
投資実行から3年ほど経ってくると、投資業務やPMIもだんだんと理解できるようになったかなと思います。そのころから自身の意見も投資先に提案するようになりました。ロールアップやEXIT活動のフェーズにおいては案件を推進できるようになっていたと思います。
なかなか大変そうなOJTですね…(笑)
他の会社ではどうか分かりませんが、投資判断にしても、ハンズオン支援にしても、やはり実際にやったり、投資先に出向いたりしないと分からないことだらけです。最初は苦しいところもありましたが、放り込んでもらうことが結局、一番の近道なのではないかと思います。
それに、やはり大和PIパートナーズのやり方というものもあります。例えば「伴走型の支援」といっても、どのように伴走するのがいいのか、ポリシーの部分を含めて、上席者の方々のやり方を見て感じ取るという経験をしていくことで、共通の理解を持った取り組みができるようになるのではないかと思います。
そうやってチームワークが生まれていくという感じでしょうか。
そうかもしれないですね。案件によっては、タイトな期間で投資検討を行うために、早朝や深夜に会議を入れる…といったような一般常識では怒られるような進め方もあったりするのですが、上席者の方も含めて「ディールなので」の一言で納得して付き合ってくれることは印象的です。
投資先の事業や従業員を尊重する姿勢を忘れない
そういった経験を積まれて、最近ではケータリングや給食事業を手がける、東京ケータリング・ホールディングス株式会社(以降、「東京ケータリング社」)への投資で、ディールヘッドを担われていたんですよね。
東京ケータリング社への投資では、投資検討には関わっていませんが、メンバーの異動等もあり、PMIのフェーズでディールヘッドとして関わることになりました。
ディールヘッドとして、どんなことを実行されたのでしょうか?
アサインされた際に、東京ケータリング社に成長のポテンシャルを十分に感じたので、1か月ほどかけて東京ケータリング社のキーマンと協議し、改善のための施策の策定や、優先順位、スケジュールなどを明確化しました。
その後、そのキーマンとともに進捗管理を行い、併せてロールアップをソーシングしたり、実行をしたりすることで業績が改善し、非連続的な売り上げ成長も実現できました。
全社業績も非常に良い水準になったところで、さらなる同社の成長のためには同業他社のノウハウやリソースを活用した方がよいと判断し、EXIT活動※を推進することに決めました。
※2024年8月にNGFホールディングス株式会社に売却。
ところで以前、株式会社マリン・プロフーズのカーブアウト案件で、ディールヘッドの本間さんのお話も記事になりました。そこでは投資先の社員の方々の存在についても触れられていたかと思いますが、ALC社と東京ケータリング社について、柴原さんはどのように感じられましたか?
大和PIパートナーズは、あくまでも金融投資家です。自分自身で事業をオペレーションすることはできませんので、投資先の事業をより良くしていくためには、従業員の方々の協力が不可欠です。投資業務を行うにあたっては、投資先の事業や従業員に対する敬意や尊重の姿勢を忘れず、物事を進める必要があると感じています。
加えて、ALC社、東京ケータリング社、両社には最初からポジティブな社風があり、前向きで活力のある社員さんが揃っていました。経営改善において、間違いなくプラスの要素だったと思います。
例えば…のようなエピソードはあったりしますか?
そうですね…ALC社については、社長や事業部長のリーダーシップがあって、決断が必要な事項が出てきたら、すぐに決定して進めることができる点が強みでした。
また、業績目標と人事評価制度がリンクしているため、皆さんモチベーション高く働いていた印象です。期中に外部環境がマイナスに振れたこともありましたが、決して外部環境の悪さを言い訳にせず、予算達成に向けて色々な施策を考えて実行できる前向きさがあったと思います。
そして社長はいつも社員のやる気を引き出すことを考えていらっしゃいました。私も投資期間中には、さまざまな改善施策を社長と協議しましたが、「その施策を、どうやって従業員にやる気を持って取り組んでもらうかを考えてほしい」と度々指摘されました。実際に経営として組織を動かす以上、教科書的な改善策だけでなく、それを実行する人のことを良く理解しないといけないと学びましたね。
東京ケータリング社でのエピソードはありますか?
展開している社員食堂では、お客さんに喜んでもらおうと、気前よく大盛りにしたり、無料で一品追加したりしているという話を聞きました(笑)それはさすがにコストの見直しをしましたが、とても温かい印象を受けますよね。
また、先ほどのキーマンとのエピソードはいろいろあります。大きなM&A実行後、PMIが落ち着いて業績も右肩上がりになった頃に「次はどこをM&Aしましょうか?」と言われました。当時、業務負荷は相当だったはずなのですが、驚くようなバイタリティーに私も大変刺激を受けました。より良い案件の発掘、投資を行いたいと感じさせられましたね。
このキーマンとは仕事上がりによく飲みにも行きました。会社の社員同士で飲む場合、自分の会社に対する愚痴が酒の肴になるものですが、彼は「こうすればもっと会社が良くなる。効率的になる」とか、「これがしたい」などと言って、いつも前向きな話をしていました。自分の会社が好きなことがよく出ていますよね。
ポテンシャルのある日本企業が本来の力を発揮できるお手伝いを
素敵なエピソードをありがとうございます。
入社したての頃と、最近の投資、両方を振り返っていただきましたが、柴原さんは投資家としてどのような投資をしたいと考えていらっしゃいますか?
成長ポテンシャルの高い企業に投資したいと考えています。
近年SNSを中心に「JTC」※という言葉をよく目にするようになりました。日本には多くの成長ポテンシャルを持った企業がありますが、それらの企業が組織構造の複雑さ、意思決定の遅さ、セクショナリズムなどの要因により、本来の実力を十分に発揮できていないというのは、もったいないですね。
私たち投資ファンドは、投資先の役職員と協力し、売り上げ拡大、コストカット、資本効率の改善など多岐にわたる企業成長に向けた改善策を協議し、実行します。その際、改善策を推進する責任者や担当者が業務を円滑に行えるように、人事組織や報酬体系、企業文化の最適化も行います。
私は投資を通じて、投資先が成長に向けて自走できる体制を構築するとともに、その対価として適切なキャピタルゲインを得ることを目指しています。
※Japanese Traditional Companyの略。古い慣習が残る日本企業のことを揶揄する際に用いられることが多い。
そうやって考えると、楽しみな未来が見えてくる気がしますね。これからチャレンジしてみたいことがあれば教えていただけますか?
今までは、スモール~ミッドキャップの企業に投資していましたので、将来的には、もう少し大きいサイズの投資もできればと思います。
最後に、日々緊張感とプレッシャーの中、お仕事をされているかと思います。何か特別なリフレッシュ方法などを実践されていたりしますか?
長期休みの際は、欧州に旅行へ行っています。
この頃は特に中欧や東欧を中心に回っています。現地のことはほとんど調べず、国のイメージと金額のみで航空券を取りますので、「この国で何を観れば良いのか?」という状態で出国します(笑)
でも、実は目的なく行き当たりばったりだと、ストレスなく周れます。それに、実際に現地に行くと趣深い場所や深い歴史の発見ができて刺激になりますよ。
興味深いです。私もやってみたい(笑)お話の中に垣間見える柴原さんの思い切りの良さのようなものが、休暇の過ごし方にも出ている気がしました。
本日はありがとうございました。今後の柴原さんのご活躍に期待しております。